2024年3月、日銀がマイナス金利解除を決めました。
「マイナス金利」という言葉は、ニュースではよく目にするけど、一体どういうことかぼんやりとしかわからない方も多いと思います。
長く続いた大規模緩和について、簡単にまとめてみたいと思います。
目次
マイナス金利解除
日銀が3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利を含む大規模緩和の解除を決めました。
理由としては、「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた」ことが挙げられます。
実際に、①春闘で5%超の賃上げ、②物価2%超える水準(2023年通年のインフレ率3.1%)で推移しています。
今回の決定で、2007年2月の利上げを最後に緩和し続けた金融政策は、正常化への一歩を踏み出すことになります。
日銀がこれまで実施した金融政策
- マイナス金利(-0.1%)・・・ 民間の銀行が日銀当座に預けると金利が取られる。(つまり、民間企業に資金提供しやすくなる)
- 長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)・・・長期金利の上限の目途を1%とする
- 上場投資信託(ETF)の買い入れ ・・・金利全体の引き下げによる、リスクテイクを促す
2016年2月に導入されたマイナス金利は解除され、0~0.1%に引き上げられます。
長期国債の買い入れは継続しますが、リスク資産の買い入れは終了します。
これまで「金利なき世界」の弊害があった
・異次元緩和を実施後に、「ゾンビ企業」が2割増加し、25万社になる → 新陳代謝が遅れ成長率が低迷
・物価上昇や企業業績の改善も、超円高が一因だった → 「安いニッポン」、エネルギーや食料の調達に苦慮
金融正常化の姿へ
そもそも政策金利とは、どういうことでしょうか。
”政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、中央銀行(日本では日本銀行)が設定する短期金利(誘導目標金利)のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を及ぼします。一般的に好景気によるインフレ(物価上昇)傾向になると政策金利を引き上げて経済の過熱を抑え、反対に不景気によるデフレ(物価下落)傾向になると政策金利を引き下げて経済を刺激します。”
金利の上げ下げこそが、正常の金融政策の姿だと言えます。
人気の経済評論家の後藤達也さんは、今回のマイナス金利について分かりやすく解説しています。
”もう一つ大事なポイントがあります。もし、景気が悪くなって、賃金も物価も上がりづらくなったら、日銀は利上げをやめます。
そうですよね。「賃金と物価が上がっている」からこそ利上げするんですから。もし、景気が悪化して、物価上昇も鈍ってきたら、利上げどころか、また金融緩和する可能性もあるわけです
引用:【そもそも解説】マイナス金利 解除でどうなる?
参考:アメリカの政策金利
アメリカでは、2009年のリーマンショックなど、景気が悪い時には金利引き下げを実施し、景気が高騰しすぎた時は金利を引き上げていることがわかります。
今後の影響
プラスの影響
大手銀行が預金金利の引き上げを行いました。わずかとは言え、少しずつ金利がある世界に近づくでしょう。
これ以外にも、円安の是正が期待されています。
マイナスの影響
今後貸出金利は徐々に上がっていくことが予想されます。
住宅ローンについても、固定金利は上昇する可能性が高いです。
変動金利については、マイナス金利が解除されましたが、急激な金利上昇にはつながらないでしょう。
住宅ローン金利は上がるのか?
多くの金融機関が提供している変動金利の住宅ローンの金利は、、短期プライムレートを基礎にして毎年2回(4月・10月)、設定を変更しています。
(都銀の短期プライムレートは、現在1.475%)
政策金利が動いても、プライム基準が変更なければ住宅ローン金利は変わりません。
プライムレートはマイナス金利が始まる前の2009年から変わっておらず、今回もすぐには変わることはないと思われます。
今後の課題
日経新聞の記事(河浪武史金融部長)では、以下のように今後の課題が述べられています。
”バブル崩壊後、日本経済の課題は需要不足をどう埋めるかだった。本来は不況対策である金融緩和を異例の長さで続けてきた理由はそれだ。今では最大の懸念材料は人材不足となりつつある。日本の経済政策論議は金融緩和に依存して思考停止状態だった。政策のモードを転換して、供給力と競争力をともに高める新たな方策を描くときである。”
ヤフーの元社長の川邊さんも、同様にこんな投稿をしています。
今日のまとめ
日銀のマイナス金利政策の解除についてまとめて見ました。
なんとなく耳にしたニュースでも、理解できずにいることも多いこともあるでしょう。
「経済のキホン」を知ることで、実際の経済とどのようにリンクしているかを学ぶことは非常に大切です。