銀行に就職すると試験をかなり多く受けなければなりませんが、その入り口にあるのがこの銀行業務検定の財務3級です。
銀行業務検定 → 銀行業務検定 難易度・勉強法をまとめました
今日は、財務3級を受けるにあたり、要点を解説したいと覆います。
目次
- 直前整理の不明点を解消します
- 1.会社法の計算書類
- 2.企業会計原則
- 3.貸借対照表の仕組み
- 4.資産・負債の区分表示
- 5.勘定科目と貸借対照表上の記載区分
- 6.受取手形
- 7.有価証券(1)
- 8.有価証券(2)
- 9.棚卸資産の評価
- 10.有形固定資産・無形固定資産
- 11.減価償却計算
- 12.新定率による減価償却計算
- 13.投資その他の資産
- 14.繰延資産
- 15.流動負債・固定負債
- 16.引当金
- 17.純資産の部(1)
- 18.純資産の部(2)
- 19.損益計算書の仕組み
- 20.売上高
- 21.売上原価
- 22.製造原価
- 23.販売費及び一般管理費
- 24.営業外損益
- 25.特別損益
- 26.税金費用と税金支払額
- 27.株主資本等変動計算書
- 28.余剰金の配分
- 29.個別注記表の仕組み
- 30.残高試算表と当期純利益の算出
- 31.減損会計(1)
- 32.減損会計(2)
- 33.リース会計
- 34.退職給付会計
- 今日のまとめ
直前整理の不明点を解消します
1.会社法の計算書類
身近な会社として100円ショップ 「セリア」の実際の決算書を見てみましょう。
⇒セリアの2020年3月期決算書 (P.37から財務諸表が掲載されています。)
(※ちなみに、上場会社の有価証券報告書は金融庁の電子開示システムEDINETで閲覧できる他、多くの企業は自社のウェブサイトでIRとして公開しています。)
「個別注記表」はどんなものかと言うと、重要な会計方針や貸借対照表、損益計算書に関する注記(つまり解説)がされているものです。(上のセリアの例ではP.45です。)
決算の評価方法は、複数ある場合があるので選択した評価方法が明記されていたり、会計基準が表記されているのです。
2.企業会計原則
試験では第1問目に、企業会計原則が問われていることが多いです。
最初のうちは、何の原則か区別がつきにくいと思いますが、財務諸表の全体像を理解すると明確に違いがわかるようになります。
また時々、一般原則に該当しない「企業会計注釈」についての設問も出ますが、原則をちゃんと理解して慌てずに答えましょう。
3.貸借対照表の仕組み
4.資産・負債の区分表示
流動・固定の区分方法は、①(正常)営業循環基準 と、②ワン・イヤールール(1年基準)があります。
最初に、営業循環基準を適用し、該当しないものなどは1年基準になると覚えておきましょう。
図に示したような「営業サイクル」にあるものは営業循環基準に該当しますが、「正常」取引でないもの、例えば不渡り手形、破産更生債権などは該当しないことを注意しましょう。
流動性配列法
資産の部は、換金性の高い科目から低い科目の順に記載されており、「流動資産 ⇒ 固定資産 ⇒ 繰延資産」の順で並んでいます。
負債の部は、支払期限の早い科目から遅い科目順に記載されており、「流動負債 ⇒ 固定負債」の順となっています。
5.勘定科目と貸借対照表上の記載区分
流動資産での項目は、流動性の高いもの、つまり現金化しやすいものから、順番に配列するように定められています。
例えば、流動資産については、現金⇒受取手形⇒売掛金⇒有価証券⇒棚卸資産という順で配列されています。
受取手形が、売掛金より前なのは、売掛金が口約束なのに対して、受取手形が書面による約束であるから、また割引による現金化が可能となるためと言えるでしょう。
固定資産は、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つの区分となっています。
6.受取手形
ここでの注意点は、先日付の小切手は「受取手形」として処理されることでしょう。
また、割引手形や裏書手形に関して、資産の部の計上から控除するが、万が一の際には債務保証することから、注記表に記載する必要があります。
7.有価証券(1)
有価証券は一見ややこしそうに見えますが、一度理解できれば簡単です。
表示区分について、売買目的有価証券はいつでも売買可能であることから「流動資産」に計上する一方、子会社株式等は、売買するつもりはないことから「固定資産」(投資その他の資産)に計上されます。
評価基準は、原則「時価」となりますが、子会社等は売却予定がないことから「取得原価」となることを押さえればほとんどカバーできます。
8.有価証券(2)
上記でも表しましたが、満期保有目的の債券は、満期まで保有する意向であることから、原則として取得原価で評価します。
ただし、金利調整が認められる場合には償却原価法によって評価します。
9.棚卸資産の評価
棚卸評価法については、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法などがあります。
設問の都度確認すれば対応できますが、移動平均法(※)は若干計算方法が特殊なので注意が必要です。
(※移動平均法とは、仕入れの都度、その数量および金額を直前の数量及び残高金額に加えて平均単価を算定する方法。)
10.有形固定資産・無形固定資産
読んで字のごとく、土地や建物など実体のあるものを有形固定資産とよびます。
注意すべきことは、建設中の固定資産である「建設仮勘定」も含まれていることです。
また、無形固定資産は、物理的かたちはないものの、経済的優位性を生み出す資産として価値を生ずるものをいいます。
具体的には、法律・契約によって認められる権利や、「のれん」などが含まれます。
11.減価償却計算
「減価償却」は、設備などを使用する期間で案分した金額を毎期費用として計上していくものです。
仮に設備を導入した時に全て費用計上すると、その年だけ費用負担が大きく、翌年以降は費用がかからなくなるため、「減価償却」することで使用期間に応じて費用を案分しているわけです。
財務3級では、使用開始した月数も考慮に入れているので、計算時には注意が必要です。
12.新定率による減価償却計算
平成24年以降、新定率法として「定額法の償却率×200%」にて算出できるようになりました。
13.投資その他の資産
投資その他の資産には、関連会社株式、(長期保有の)投資有価証券、ゴルフ会員権、差入保証金・敷金などが含まれます。
また、経営破綻した取引先との売掛金などが、「破産更生債権」として計上されており、その貸倒見積高は原則として貸倒引当金として処理します。
経過勘定
経過勘定とは、「現金のやりとり」と「計上すべき収益や費用」のタイミングがズレたときに修正するための勘定科目です。
経過勘定科目には、「前払費用」「前受収益」「未払費用」「未収収益」の4つがあります。
未払金などの未決済項目とごっちゃになりそうですが、大事なポイントは、役務の提供に関する契約に該当することです。
上記の図のような、保険金をまとめて支払った場合や家賃の一括払いなどが該当します。
勘定科目を選ぶ際のひっかけ問題として出やすいので注意です。
14.繰延資産
繰延資産は、①株式交付費、②社債発行費、③創立費、④開業費、⑤開発費の5項目に限定されています。
ひっかけ問題で、これ以外の項目が出てくる場合があります。
15.流動負債・固定負債
借入金や社債などはワンイヤールールに基づいて1年以内かどうかで、流動資産・固定負債に分かれています。
16.引当金
「貸倒引当金」は、売掛金や貸付金の中で回収不能となる可能性が高いものです。
「評価性引当金」として、資産の部に控除項目(△、マイナス)として記載します。
引当金には、その他にも賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金などがありますが、それらは「負債性引当金」として負債の部に計上します。
17.純資産の部(1)
純資産は、①株主資本、②評価・換算差額、③新株予約権、④非支配株主持分などに区分されます。
18.純資産の部(2)
余剰金は、資本余剰金と利益余剰金に区分されます。利益余剰金は、損益取引によって生じた利益を源泉とする内部留保からなる余剰金をいいます。
19.損益計算書の仕組み
損益対照表には「5つの利益」があることは、まずちゃんと理解してほしいです。
①売上総利益 ・・・ 売上ー売上原価
②営業利益 ・・・ 売上総利益ー販売費および一般管理費(販管費)
③経常利益 ・・・ 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
④税引前当期純利益 ・・・ 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
⑤当期純利益 ・・・ 税引前当期純利益 - 法人税等 ± 法人税等調整額
20.売上高
売上高の計上は、実現主義の原則に従います。
ただし、例外もあるので注意が必要です。
・委託販売 ・・・(原則)委託品を販売した時、(例外)仕切計算書が到着した時
・試用販売 ・・・取引先による買取意志
・予約販売 ・・・商品の引き渡しが完了した分
・割賦販売 ・・・(原則)商品の引き渡し時、(例外)割賦金の回収基準、回収期限到来基準
長期の請負工事においては、進捗部分について成果の確実性が認められる場合には、工事進行基準が適用できます。(認められない場合は、工事完成基準となります。)
21.売上原価
簿記をやっている方はイメージができやすいですが、原価は次の式で表せます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 + 期末商品棚卸高
22.製造原価
製造業において売上高に対応する売上原価は、対象製品の製造に関した費用として、製造原価といいます。
当期総製造原価 = 材料費 + 労務費 + 製造原価
さらに、材料費 =期首材料棚卸高 + 当期材料仕入高 ‐ 期末材棚卸高 と示します。
23.販売費及び一般管理費
販売活動に対して発生した費用を販売費、製造活動以外の一般管理において発生した費用を一般管理費といい、総称して販売費および一般管理費といいます。(略して、販管費と呼ばれます。)
売上総利益から販管費を引いたものが、営業利益です。
24.営業外損益
営業外収益には、受取利息、有価証券利息、受取配当金などの金融収益や、投資不動産賃貸料が入ります。
営業外費用には、支払利息、社債利息などの金融費用や、社債発行費・創立費などの償却費、有価証券評価損などがあります。
営業利益に、営業外損益をあわせたものを経常利益といい、企業の正常な収益力を表します。
25.特別損益
臨時的に発生する損益項目を特別利益・特別損失としいます。
固定資産の売却損益や、現存損失などがあります。
26.税金費用と税金支払額
法人税等は、当期の収益(課税所得)に対して課せられる法人税、住民税、事業税からなっています。
27.株主資本等変動計算書
貸借対照表の純資産の部のうち、①株主資本、②評価・換算差額等、③新株予約権に変動事由を表します。
28.余剰金の配分
余剰金の配当などは、配当可能額の範囲で行う必要があるため、注意が必要です。
なお、支払配当金は、損益計算書には掲載されないことを覚えておきましょう。ひっかけ問題で頻出します。
29.個別注記表の仕組み
会社法によって作成が定められている計算書類の一つです。
決算の評価方法は、複数ある場合があるので選択した評価方法が明記されていたり、会計基準が表記されているのです。
30.残高試算表と当期純利益の算出
全ての取引は仕訳によって記帳されます。
各勘定科目ごとの残高を一覧表として表示したものを残高試算表といいます。
31.減損会計(1)
固定資産の収益性が低下して、投資額の回収が見込めなくなった場合に、帳簿価額を減額する会計処理を、減損会計といいます。
有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産が対象となります。
32.減損会計(2)
帳簿価額>将来キャッシュフローの総額 となった場合に、減損損失認識をします。
回収可能価格は、①売却による回収額としての正味売却価額、②使用による回収額として使用価値のうち、いずれか高い方の金額とします。
33.リース会計
リース取引には、①ファイナンス・リース取引と、②オペレーティング・リース取引があります。
以前は、リースは費用だけを損益計算書に計上するだけでしたが、新会計基準では、自社管理の下で長期で使うものは、「①ファイナンス・リース」に該当し、固定資産に「リース資産」、固定負債に「リース債務」とし計上するようになりました。買ったもの(通常の売買取引)と同様なので、減価償却も行われます。
また、少額で短期間借りるような場合(通常の賃貸借取引と同様)は、「②オペレーティング・リース」に該当し、単に費用として計上すればいいです。
ファイナンス・リース取引の会計処理の注意点としては、リース料を「①利息相当額」と「②利息以外の金額」にわけることです。つまり、リース料支払い時には、「②利息以外の金額」をリース債務から控除します。
34.退職給付会計
退職給付引当金として計上する会計処理をいいます。退職給付金引当金は、原則として退職給付債務から年金資産を差し引いたものがけいじょうされます。
今日のまとめ
財務3級について、解説をしてみました。改めて学ぶことで、自分自身も改めて学びとなる点が多くありました。
後半戦も近日中に公開したいと思います。→ 財務3級後半戦まとめ
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