「ウェルビーイング」は、概念であり、幸福や満足感などのポジティブな心理状態を指します。
近年、さまざまな調査から、自分が幸せだと感じる従業員は、前向きで業務のパフォーマンスが高く、組織に良い影響をもたらすことがわかっています。
今回は、ウェルビーイングについてまとめてみました。
目次
ウェルビーイングを知る意味
幸せについての研究が進み、幸せとは何なのかを表したものがいくつかあります。
それらの条件を知ることによって、出来ている点、出来ていない点を書きだしたり、改善のアイデアを出すヒントとなったりします。
そうすることで、きっと幸せになる方法は見つかるでしょう。
また、価値観の多様性、人材の流動性の高まりなどから、ウェルビーイングの意識は今後も高まっていくものと考えられます。
次からは、「心理的ウェルビーイング」を研究した、リフの6軸モデル、前野隆司さんの4因子について、詳細を見ていきます。
Ⅰ.Well-beingの6軸モデル(キャロル・リフ)
心理学者のキャロル・リフ氏が、心理的ウェルビーイング(幸福感)には6つの要素があることを明らかにしました。
- 自律性
- 環境適応力
- 他者との良好な関係
- 自己の成長
- 人生の目的
- 自己受容
1.自律性
「自分の基準で自分を評価している、自分の意思で行動をコントロールしている」という感覚
自律性とは、物事を進めるにあたり自分自身で計画を立て、自らの考えで目的達成のために行動することです。
刺激と反応
世界的ベストセラー『7つの習慣』で、第1の習慣は「主体的である」です。これこそ、周りによって流されるのでなく、自分の進むべき道を自分自身で決めていくことです。
2.環境適応力
「複雑な周囲の環境を統制できる、周囲の環境を自分の必要性や価値に合わせて選択することができる」という感覚です。
多様な価値観を知る
まずは、多様な価値観を知ることが環境に適応する力につながっていきます。
メタ認知
「メタ認知」とは、自分が認知していることを客観的に把握し、制御すること、つまり「認知していることを認知する」ことです。
3.他者との良好な関係
「温かく信頼できる他者との関係を築けている」という感覚
人に頼っていい
自立とは、多くの人に依存することである
『生きる技法』(安富歩)
多くの人が「自立するということは、誰にも頼らない事だ」と認識しているのではないでしょうか。人になるべく頼らないことが、立派だと認識すらしているかもしれません。
しかし、そもそも人は一人では生きられません。多くの人に協力してもらいながら、共に生きていくことを目指しましょう。
自立は「他者への依存からの脱却」ではありません。むしろ、多くの人に依存することが「自立」につながると明確に意識すべきです。
4.自己の成長
「自分自身がいつも進歩し、成長している」という感覚です。
成長したいと思いながら、なんとなく躊躇して、いつまでもチャレンジできないこともあるでしょう。
わたしも、一歩踏み出すのが怖くなったり、メンドウに感じたりすることはよくあります。
そんな時にいつも思い出すのは、越境学習についての「混乱するジレンマ」という言葉です。
越境学習での「混乱するジレンマ」
越境して恥ずかしい思いをしたり、苦しい思いをしたりする「混乱するジレンマ」(ジャック・メジローの変容的学習の用語)に直面することでリフレクションが起こります。
出典:産業省・越境学習によるVUCA時代の企業人材育成
チャレンジする時は、うまくいくことばかりではありません。むしろ、うまくいかないことの方が多いのではないでしょうか。
チャレンジとは、この恥ずかしく感じ、苦しい気持ちになること自体だと捉えていきたいと常に思っています。
5.人生の目的
「人生に目標や目的、方向性や信念を持っている」という感覚
自分がどう生きたいかと考えることは、本当に大切ですね。
人生の目的とは「心を磨くこと」
私たち人間が生きている意味、人生の目的はどこにあるのでしょうか。もっと根源的ともいるその問いかけに、私はやはり真正面から、それは心を高めること、魂を磨くことにあると答えたいのです。
出典:『生き方』稲盛和夫
私自身、社会人になってからもモヤモヤと悩む時期が多かったですが、稲盛和夫さんの『生き方』を読んでからブレることが減っていったように思います。
6.自己受容
「よい面だけでなく、悪い面も含めてあらゆる自分を認めて受け入れているという感覚」です。
この感覚が幸せにつながっているという実感はすごくあります。まさに「嫌われる勇気」でもこの言葉が使われていて、私自身、生きる上でも指針となっています。
「嫌われる勇気」:自己肯定と自己受容
この両者には明確な違いがあります。自己肯定とは、できもしなのに「わたしはできる」「わたしは強い」と、自らに暗示をかけることです。これは優越コンプレックスにも結びつく発想であり、自らに嘘をつく生き方でもあるといえます。
一方の自己受容とは、仮にできないのだとしたら、その「できない自分」をありのままに受け入れ、できるようになるべく、前に進んでいくことです。自らに嘘をつくものではありません。
出典:『嫌われる勇気』
「嫌われる勇気」:肯定的なあきらめ
わたしは、「肯定的なあきらめ」という言葉を使っています。
課題の分離もそうですが、「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めるのです。
(中略)
ありのままの「このわたし」を受け入れること。そして変えられるものについては、変えていく”勇気”を持つこと。それが自己受容です。
出典:『嫌われる勇気』
Ⅱ.幸せの4つの因子(前野隆司)
1.「やってみよう」因子
自己実現の成長です。やりがいや強みを持ち、主体性の高い人は幸せということを表す因子。
2.「ありがとう」因子
つながりや感謝、あるいは利他性や思いやりを持つことが幸せであることを表します。
3.「なんとかなる」因子
前向きかつ楽観的で、何事もなんとかなると思える、ポジティブな人は幸せです。チャレンジ精神がやはり大事です。
4.「ありのままに」因子
独立性と自分らしさを保つこと。自分と他者を比べすぎず、しっかりとした自分らしさを持っている人は幸せです。
どんな行動をとるべきか
・1日の終わりに印象を振り返ると、評価を良くしようという感情が働く。
そのメカニズムは明確でないが、印象を振りかえるだけで よい評価をする傾向がある。
・雑談でいいのは、「タバコ部屋」のような空間で、上下に関わらず話す雰囲気をつくること。
信頼を生む3つのポイント
チーム内の同僚に3つの問いかけをすることが有効だと言っています。
年収と効用の関係
年収が750万ドル(800万円)に達するまでは、年収が増えるほど幸せになるけれども、それを超えると感情的幸福は比例しなくなる。
今日のまとめ
ウェルビーイングについて、関連事項をまとめてみました。
地域活性化にもつながる文脈もありましたが、皮膚感覚でもその印象があります。