資本主義の限界が言われて久しいですが、今後どのような社会になればよいかについては、明確な答えがありません。
そんな中で、コテンラジオで「鎌倉資本主義」が紹介されており、ポスト資本主義の一つの解として関心をもちました。
→ ポスト資本主義 ー現代人が彩る新たな社会のグラデーションー
今回は鎌倉資本主義の概要をお伝えした上で、地域コミュニティの重要性や、自分自身が考える社会的な豊かさについてをまとめました。
目次
「鎌倉資本主義」とは
軸となるのは「3つの地域資本」という考え方です。
①地域経済資本(財源や生産性)
②地域社会資本(人のつながり)
③地域環境資本(自然や文化)
資本主義、GDP指標の限界
「GDPという指標に限界が来ている」と思っているんです。株式会社という仕組みが世の中にできたのが約400年前、GDPができたのが約80年前で、基本的にはこうした資本主義の仕組みは「資本を増やしていけば、人は幸せになる」「経済発展で国民は幸せになる」という考え方に基づいています。
(中略)しかしどうも実感値として、人の幸せはGDPと単純に比例しないという思いがある。これは新しい指標が必要なんじゃないか、あるいは資本主義自体を新しくしないと幸せじゃないんじゃないか、と感じるようになりました。
https://mag.sendenkaigi.com/brain/201808/creators-and-regional-new-relationship/013786.php
GDP指標の重視するあまりに、貧富格差の拡大、自然破壊という2つの大きな問題が起きていることを危惧してます。
また、経営の神様と言われた、京セラ創業者の稲盛和夫さんは、著書の中で同様の趣旨を述べています。
いまこそ経済成長至上主義に代わる新しい国の理念、個人の生き方の指針を打ち立てる必要があります。
それはまた一国の経済問題にとどまらない、国際社会や地球環境にかかわってくるきわめて大きな課題でもあります。
(中略)
私は、これからの日本と日本人が生き方の根に据えるべき哲学をひと言でいうのなら、「足るを知る」ということであろうと思います。
また、その知足の心がもたらす、感謝と謙虚さをベースにした、他人を思いやる利他の行いであろうと思います。
出典:「生き方」(稲盛和夫)
稲盛さんは、上に続く箇所で、GDPの総額が変わらなくても、その中身、産業構造自体が次々と変わっていくような社会になればよいと言ってます。
健全な新陳代謝があり、社会が活力や創造性に満ちていることが大切です。
①地域経済資本(財源や生産性)
「地域を盛り上げるには、経済活動を活性化させることが大前提」と柳澤さんは語っています。
何をするにも根幹となるのは経済活動であるとし、「経済資本」は地域に根ざして活動する企業を指します。
経済的資本は、金融資産と人的資本
個人の幸福を考える上では、経済的資本については、現状の”金融資産”と、働いて稼ぐ力の”人的資本”に分けられると考えられます。
橘玲さんは著書『幸福の資本論』の中で、「老後とは、人的資本をすべて失った状態のこと」と定義しており、老後の経済的に不安を解消するもっともかんたんな方法は、老後を短くすることと言っています。
さらには、”生涯現役なら老後問題そのものがなくなる”と言っています。
個人的には賛同する部分も多いですが、高齢者の労働の問題については、賛否があると思います。
ただし、このように地域でいつまでも働ける環境を整えることも、豊かな社会づくりの一つの選択肢になるかもしれません。
②地域社会資本(人のつながり)
「社会資本」とは、地域で働く人とその家族などのコミュニティのことで、「まちの社員食堂」は、まさにこのためにつくられたそう。
社会資本は、3つの世界に分かれる
先ほどの『幸福の資本論』でも、社会資本について書かれていて、人間関係には顕著な濃淡があるとしています。
家族や恋人といった深い『愛情空間』、親しい友だちに加えて、会社の先輩後輩や近所の知り合いなども含む『友情空間』があります。(大体150人ぐらいだと言われています。)
その向こう側には、茫然とした他人である『貨幣空間』が広がっていると考えられます。
表現方法の違いはあれども、こういった関係性の違いを理解することは重要です。
「幸福の資本論」では、最適ポートフォリオは、”強いつながりを恋人や家族にミニマム(最小)化して、友情を含めてそれ以外の関係はすべて貨幣空間に置き換える”としています。
しかし、鎌倉資本主義でも問われているように、お金でやりとりができる社会になりすぎているために、地域社会での「ゆるいつながり」を多くつくることにこそ価値があると思っています。
③地域環境資本(自然や文化)
最後の「環境資本」は、自然、伝統工芸、歴史、特産物など地域が持つ魅力のこと。
私自身においても、価値観の反転が必要かもしれません。
地域に根付いた祭りや、特産物などを知り、大事にしようという思いが大切ですね。
循環する時間
詩人の山尾三帰さんは、人間は2つの時間を生きていると言っています。
一つは、「直進する時間」=進歩していく時間です。もう一つは、「循環する時間」=グルグルと繰り返していくものです。
資本主義においては、技術革新と拝金主義的な考え方に比重が高まりすぎているように感じます。
今ある自然など循環する時間をより大切に感じていきたいものです。
本の工夫も面白い
今日のまとめ
「鎌倉資本主義」がどんなもので、経済や社会が今後どのように進めばいいかを考えてみました。
地域社会にえ豊かに暮らすための選択として、こういった考えが広まるとよいと思います。
また、個人としても物質的な豊かさを考える上も、この3つの資本について改めて見直すことは重要です。
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