読書

SDGsは まやかしに過ぎない。「人新世の資本論」を読む。

2021年11月27日

昨年9月に出版された「人新世の資本論」を読みました。

かなり売れている本だとの認識はあったのですが、著者の斎藤幸平さんがテレビで柴咲コウさんと対談をしていたのを見て非常に興味を持ちました。

今回は、著書のあらすじと、私が読んで面白いと感じた3つのポイントを書きたいと思います。

「人新世の資本論」のあらすじは?

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「人新世」とは

「人新世」とは、地質学の新たな分類として提唱されたものです。

地球は新たな年代に突入したと言い、人間の経済活動によって地球環境にまで影響が及ぼされている時代区分だと言われています。

本のテーマをひと言で表すと

オリラジ中田さんはこの本をYouTube大学の中で、端的に次のように伝えています。

環境破壊の時代における資本主義批判

中田敦彦のYouTube大学 -【人新世の資本論①】人類の経済活動が地球を破壊する時代

さらにわかりやすく言うと、

環境破壊を止めるには、資本主義をやめるしかない

中田敦彦のYouTube大学 -【人新世の資本論①】人類の経済活動が地球を破壊する時代

あいわからず、中田さんのYouTube大学はわかりやすいので、本書を読む前後に予習・復習をするとより理解が深まると思います。

また本を購入していなくても、全体像はだいたい理解できます。ただ、やはり本を読んだ方が圧倒的に面白いです。

私が「人新世の資本論」を読んで感じた3つの面白さ

1.現代が大局的につながって見える

本書では、環境問題と資本主義を主に書かれており、現代の世界を取り巻く幅広いテーマが関連します。

この本で示されてるように環境問題は、地球の限界(プラネタリーバンダリー)に達しているという観点で見ると危機感を感じざるをえません。

近年では日本でも自然災害の増加が顕著であり、環境問題は他人事ではなくってきています。

グレタさんをはじめとする若い世代が、現在の環境への取り組みに怒りを含んだ行動をしめしているのもうなづけます。

さらに、コロナ禍で特に世界中の話題がより身近になっていますが、資本主義というテーマで見ると、全世界が一つのマーケットのようになっているとも感じます。

その上で、資本が利潤を得るための安価の労働力のフロンティアが消滅しかけている、つまり外部性がなくなっているのです。

以前のように未開のフロンティアがなくなりつつあり、経済発展としても限界が見えつつあるとの主張も理解できるのです。

2.自分が「見えていないもの」を見せられる

環境問題と資本主義を理解する上で出てくるキーワードとして「グローバル・サウス」があります。

「グローバル・サウス」とは、以前は南北問題と言われていた、グローバル化する中で被害を受ける領域ならびに住民を差しています。

現在では、必ずしも地理的な南北に限定されませんが、過去の問題はほとんど解決されていません。

資本主義の中で先進国は知らず知らずのうちに、グローバルサウスから資源やエネルギーを収奪に基づいたライフスタイルを送っています。

本書ではそれを「帝国的生活様式」という刺激的な用語で表していますが、実際にそうなんだと思います。

先進国では、大量生産・大量消費型の社会が豊かな生活を実現するものとされ、ファストファッションや、海外の食料品など、現在の日本では、驚くほど安く手に入ります。

最終製品がこれらの価格で販売されてるのならば、現地の収入はほんとにわずかなものであることは容易に想像できます。

しかし、普段はそれが現実から遠い場所で行われているため、不可視化されているのです。

また、環境問題にしても、社会全体でようやくSDGsが認知され始め、色んな社会問題を解決する策がとられています。

でも、それだけでは悪化しつづける環境問題を止めるには不十分だと言います。ちょっとした行動をとることで、大きな問題から目を背けてるというのです。

そのため、本書の冒頭には、次のような過激なタイトルがついています。

SDGsは「大衆のアヘン」である!

「人新世の資本論」:斎藤幸平

かつてマルクスが、資本主義のもたらすつらい現実を宗教を「大衆のアヘン」だと批判したように、SDGsは現代版の「大衆のアヘン」だというのです。

麻薬に逃げ込むことなく、直視しなくてはならない現実は、人間のあり方を大きく変えてしまっているからです。

3.それでも、人は生き方を選択しなくてはならない

「環境問題はすでに限界を迎えている。そのために、資本主義を捨て、脱成長社会を目指さなければならない。」という著者の主張は理解できるところもあります。

しかし、いきなり社会は変えられないし、現在生きている環境をたった一人で変えることはできません。

そして、たとえその行動水準が十分でないとしても、ようやく社会に芽吹いたSDGsの取り組みを否定できないのです。

いままで見えていなかった現実を知り、小さな一歩を歩みだすことしか一般の人にはできません。

それでも、著書でも最後に書かれていたように、「3.5%」の人が本気で立ち上がれば社会が大きく変わるといっています。

その小さな一歩が社会を変えるきっかけになっていけばと望んでいます。

今日のまとめ

久しぶりに本を読んで、ブログを書きました。

著者の主張をまったくそのまま受け入れられているわけではないですが、知らなかったこと、もしくは見て見ぬふりをしていたことに自分の意識が強く向いた本でした。

そういった意味では、自分の視野を広げられる良書だと思います。

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